1985年にオープンしたウェアショップ「スポーティフ」。
2003年にオープンしたインテリアショップ「AREA」。
湘南に生まれ、東京へ進出しつつも地元を大切にする
ふたつの人気ブランドの「これまで」と「これから」を、
ともに茅ヶ崎出身のオーナー、岩倉瑞江さんと野田豪さんに伺いました。
---野田さんがAREAをオープンする際に、ひとつの目標としてスポーティフの存在があったと聞きました。
野田(以下N) 長く続けているということと、いつも話題を振りまいているということ。ショップとして理想の形だと思うんです。僕にとって、スポーティフは「永遠の商店」なんですよ。あ、商店なんて言ったら失礼かな。
岩倉(以下I) いえいえ、商店ですよ。
N 自作の洋服を小さなお店で売ることから始めて、今もその感覚を保ちつつ第一線で活躍されている。僕が好きな茅ヶ崎は、岩倉さんがつくってくれたんですよ。小売りを頑張っている先輩たちがいい雰囲気の街をつくり、それを見て育った僕らは「ここは特別な街なんだ」と思えるようになった。ブレッド&バター(※)やスポーティフは、僕の原動力です。
I (照れながら)ありがとうございます。自分の好きでやってきたことですが、そう言ってもらえるのは嬉しいですね。私が子どもの頃は、茅ヶ崎なんて松林ばかりでショップもレストランもない。そんな中、大人たちは思いっきりオシャレをして、ホームパーティを開いていたんです。パーティというよりもバカ騒ぎかな(笑)。それを見て育った体験が、今の私をつくったのかもしれません。そうやって、どんどん受け継がれていくんですね。いずれ、野田さんを見て育った若い世代が湘南を盛り上げてくれるわ。
N そうなってくれればいいなと思いますね。バトンは渡していかないと。

---AREAの東京・青山進出とともに、野田さんは茅ヶ崎で過ごす時間が減ってしまったそうですね。
N ベースは今も茅ヶ崎ですが、帰ってこられるのは週に1度ほど。海が恋しくなりますね。
I 野田さんはサーフィンをされるんですか?
N します。今はなかなかできなくなりましたが、青山へ行くまではずっと。
I 逆に、私はずっとしなかったんですが、最近始めまして…。
N カッコいいですね!
I 今まで、海はそこにあればそれでいいって感じだったんです。でも、犬を飼い始めて毎日散歩に行くようになってからは、1日1回見ないと落ち着かなくなっちゃって。
N 湘南と東京では、光の量と匂いが違います。外に出たことで、初めて気付かされました。
I スポーティフも青山にショップがあるんですよ。
N もちろん知っています。前を通る度に「頑張ろう!」って思いますから(笑)。AREAは今、ニューヨーク出店の準備を進めているんですよ。その前に…と、昨年の12月には再び茅ヶ崎に店を構えました。僕の根っこは茅ヶ崎で、それはどこへ行っても同じなんです。どこだろうと、AREAの家具はメイド・イン・茅ヶ崎。ニューヨーカーに「チガサキ」と言わせます(笑)。そして、メイド・イン・茅ヶ崎の家具が、世界のどこかで3世代や4世代にも渡って受け継がれていったら、こんなに嬉しいことはないですね。
I スポーティフではいらっしゃるんですよ。「おばあちゃんやお母さんが好きだったから」と言って買っていかれるお客さま。
N それは、ブランドが確立しているということですよね。
I すごく幸せなことだなって思います。

---スポーティフでも、一時期インテリアを扱っていらっしゃったとか。
I ええ、5年ほど前でしょうか。家具をうちのプリントで巻いて販売していました。でも、インテリアは難しいですね。洋服のように買い替えるものではありませんし。
N 昨年のミラノサローネではプリントがブームでしたよ。家具にグラフィックのパターンを入れていくというのは、世界的な最先端です。
I 私は早すぎたのね(笑)。
N 次回は、うちとコラボしましょう! その際はぜひ手伝わせてください。
※1970年代に、岩倉さんがプール付き・600坪の自邸のガレージで営業していた伝説のカフェ。サーファーやミュージシャンが集い、 「おしゃれで自由でかっこいい」という湘南のイメージを決定付けた。
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